大気水圏科学とは
私たちのセクションは、主に地球上の空気や水を対象として、それらの中で起こる様々な現象を研究する学問分野から構成されています。気象、海洋、陸上の水循環が主な研究対象です。
ニュース
2024年3月27日 沖大幹教授が「ストックホルム水大賞(Stockholm Water Prize)」を受賞されることが決定しました。(ホームページ)
JpGU大気水圏科学セクションプレジデンシャルセミナー(オンライン)
[第4回]
日時:2024年9月5日(木) 17:00~18:00
講演者:大手 信人 先生(京都大学大学院情報学研究科 教授)
講演題目:日本の生態系ダイナミクスを研究する楽しさ
講演要旨:
僕がここでいう「生態系ダイナミクス」というのは,概ね物質循環論的な動態のことで,たとえばササラダニの行動生態までつぶさに考える分解能はありません.ですが,生態系というシステムは(例えば,森林生態系ですが)ササラダニが落ち葉を分解する.というような生物の顔の見える仕組み包含しているので,動態をモノの動き(流れと貯留)だけで記述すると,話はあまり面白くありません.
一方で,森林にいるあらゆる生き物の行動生態が解りさえすれば生態系ダイナミクスが記述できるかといえば,それもそんなことはなくて,地球物理学的・化学的なモノの動きが生き物の来し方行く末を左右しますから,結局,生態系の動態を理解するには,理科4科目全部でことにあたる必要があることになります.日本の森林生態系のことを調べていると,このことを痛感します.これは日本の気候・水文環境,地質・地形学的環境が,グローバルに見て結構ユニークだからです.そのことをお話できればと思います.
[第3回]
日時:2024年4月3日(水) 17:00~18:00
講演者:竹見 哲也 先生(京都大学防災研究所 教授)
講演題目:メソスケールに組織化する降水系の動態
講演要旨:
積乱雲のような降水雲は,環境の安定度・湿度・風速場の条件の違いに応じて,しばしばメソスケールに組織化し,線状や団塊状など様々な形状に集団化します.線状に組織化する場合でも,移動性のスコールラインや停滞性の降水系があります.日本では,停滞性降水系が発達すると,降水雲が繰り返し発達して同じ地域に降水が生じることで,時に線状降水帯と呼ばれる豪雨域が形成されます.線状降水帯は,特に集中豪雨による災害をもたらす危険性が高いことから,その予測精度の向上の取り組みが進められています.こういったメソスケールに組織化する降水系は,どういった大気条件で,どのような形態に組織化し,どの程度の降水をもたらすものなのでしょうか?そもそも,なぜメソスケールに組織化するのでしょうか?こういった点について,最新の研究成果を交えて紹介いたします.
[第2回]
日時:2024年2月29日(木) 17:00~18:00
講演者:日比谷 紀之 先生(東京大学 名誉教授/東京海洋大学 客員教授/海洋研究開発機構 招聘上席研究員)
講演題目:月と海底地形が織りなす深海乱流の世界
講演要旨:
表層からの熱を下方に伝え、深層水を温めて鉛直に引き上げる役割を担う深海乱流混合は、長期気候変動を支配する深層海洋循環 (MOC) と強くリンクしています。本講演では、このMOCモデルの高精度化に向けて解明してきた研究結果、例えば、主密度躍層深度での乱流混合 (far-field mixing) 強度の緯度依存性とそのグローバルなマッピング、強い潮流により発生する内部風下波の砕波に伴って粗い海底凹凸地形上に形成される乱流混合 (near-field mixing) の鉛直構造とその新しいパラメタリゼーションなど、月と海底凹凸地形が織りなす深海乱流混合の実態について最新の研究成果を紹介します。
[第1回]
日時:2023年11月2日(木) 17:00~18:00
講演者:沖 大幹 (東京大学 大学院工学系研究科 教授)
講演題目:地球規模の水循環における人間活動の痕跡
講演要旨:
大気水収支法を用いた地球規模の水循環推計や世界の大河川の長期データ解析に見いだされた人間活動の痕跡の検知、貯水や取水といった人間活動を考慮したグローバル陸面モデルの構築と陸水総貯留量の変化から推計された海面水位変動への影響などについて紹介し、大気と海洋を結ぶ陸面水文研究の近年の発展の一端に触れていただければと思います。